### 1、「あわじ瓦めし」はどんな商品?
「あわじ瓦めし」とは、実際の淡路瓦と同じ素材・製法で作られた釜めしの蓋=「あわじ瓦ふた」を使用した釜めしのことです。
あわじ瓦めしセットは、あわじ瓦ふた、1合炊きの釜めし用の釜、台座、木製トレイ、固形燃料受け皿、ミニしゃもじがセットになっており、固形燃料も1つ付属しています。

釜めし用の釜に生米を入れ、水を200cc注ぎ、瓦ふたを載せて固形燃料に火をつけて炊飯すれば、「ふかっとほっこり」物凄く美味しいご飯が炊きあがります。通常の木の蓋で炊いた時とは、明らかに違う美味しさ。そこには、瓦のふたならではの理由があるのです。
### 2、「あわじ瓦めし」はどのように生まれたか
2019年1月、初めて南あわじ市を本格的に訪れた際、私は南あわじの景色や文化、人々に魅了されました。そして、南あわじ市が日本三大瓦の一つである「淡路瓦」の産地であることを知りました。淡路瓦が使われた南あわじの家々は立派で力強く、眺めているととても清々しい気分にさせてくれます。

加えて南あわじ市は美味しい食材が非常に豊富。
この素晴らしい特産品である淡路瓦と豊かな食材たちを組み合わせたオリジナルご当地グルメを開発できないか…と考えたところ、瓦を器に用いた釜めしというアイデアが浮かびました。最初は、瓦を蓋ではなく、釜に使おうと考えたのです。
早速、市役所の方を通じ 淡路瓦工業組合の方に相談すると、アイデアとしては面白いので話に乗ってくれそうな瓦屋さんを紹介するとおっしゃってくださいました。そのうちの1人が 大栄窯業の代表・道上さんです。
### 3、開発に協力してもらった大栄窯業について
大栄窯業株式会社は南あわじ市にある超有名瓦メーカー。その代表である道上さんは、瓦屋根を通じて多くの人の美意識を醸成し、それによってより豊かな社会を作っていきたいというビジョンをお持ちの、とても情熱的な瓦職人の一人です。

そんな道上さんに、瓦を器に用いた釜めしというアイデアをお伝えしたところ、
「瓦は熱に弱いので器には向かないかもしれない。しかし、釜飯の蓋として瓦を利用すれば、熱の問題もないし、逆に瓦の吸水性によって、炊飯時の湯気で蓋が濡れてしまうことを防げるのではないか?」
とのご意見をいただきました。
なるほど!それは機能面でも素晴らしい!是非そうしよう。
でも、普通の木の蓋と同じ形の蓋を瓦で作ってもつまらない。せっかくなら屋根の形を瓦で作ってしまおう!
あわじ瓦めしが産声を上げた瞬間です。
### 4、試行錯誤
しかしここからが大変でした。何しろ、これまで釜飯の蓋を瓦で作るなどということは誰もやったことがありません。 すなわち 金型を作るためのデータの製作からやる必要があったのです。
そこで 道上さんが以前から懇意にされていた鉄工所にご依頼。 日本家屋の屋根のミニチュア、それも釜飯の蓋に合うサイズというのは非常に難しい技術が必要で、それはすなわちデータの制作も通常の瓦の何倍も大変ということになります。お忙しい中、何度も試行錯誤していただきました。そしてついに、金型のデータが完成!それがこちらです。

このデータを基に、実際に金型を製作する運びとなりました。その見積金額はおよそ50万円!
しかし…。
### 5、意義と予算と独立と。
ここまでは、私の前職時代、つまりサラリーマンだったときの話です。ということは、この金型を実際にこしらえて、瓦の蓋を作るためには、上司に掛け合い、予算を社内外問わず何らかの形で獲得する必要があります。私は、本商品の社会的意義を熱意をもって訴え、上司に掛け合いました。その結果、答えは
NO
でした。今になって冷静に考えれば、「そりゃそうだよな…」と思います。「それを製作して、当社に何のメリットや儲けがあるの?」と聞かれたとき、意義やビジョン以上の明確なもの、売上予測や数値などを提示できなかった私の未熟さゆえの結末です。
しかし当時の私は、「何で分かってくれないんだ!」「こんな会社やめてやる!」と(多少の誇張はありますが)短絡的に考え、勢いで独立しました。
その結果として今に至るわけですが、振り返ってみても浅はかだったなあと思います。一方で後悔も特にしていません。退職するとき、当時の同僚に「どうもサラリーマンには向いてなかったみたいです(笑)」と言ったところ、「やっと気付いたんですか」と呆れられたことは生涯の誇りです。

最終出勤日。隣は同時退職する元同僚です。
さて…晴れて独立したのだから自分のやりたいことをやろう!まずは瓦めしだ!と意気込んでみたものの、先立つものが必要なことに変わりはありません。しかし独立したてでお金はない。いろいろ金策に走りましたが色よい返事はなく、あっという間に一年が過ぎました。
そんな折、ある知り合いの方から「小規模事業者持続化補助金」という補助金を紹介されました。かなり汎用性が高く使用できる補助金で、補助金額もマッチ。「これだ!」と感じ、勢いで申請してみると見事に採択決定!これで瓦めしを作れるぞ…!
と、久しぶりに道上さんを訪ねると、「あの企画まだ生きてたんですか!(笑)」と驚かれました。そりゃそうです、企画当初から二年近くたっていたわけですから…。
それでも、経緯をお話しし、改めて快諾をいただきました。しかし、二年弱の月日の経過とともに、金型に必要なアルミニウムの価格が高騰、制作費用は当初の50万円から約70万円にまで跳ね上がっていたのです。とはいえ、折角ここまで辿り着いたのですから、ここで辞めるという選択肢はありませんでした。このへんがサラリーマンに向いてないと言われるポイントなんでしょうか…。
そして、とうとう金型が完成!数回の試作を経て、瓦の蓋が出来上がりました!(この過程の画像がどこを探しても見つからず…涙)
これが、瓦の原料である粘土を金型に入れて形成し、乾燥させた状態のものです。

如何でしょうか!日本家屋の瓦屋根を素晴らしく再現できているのではないでしょうか。そして、これを焼き上げると…

見事な瓦屋根が焼きあがりました!!
この瓦の名称は、大栄窯業自慢の「銀古美(ぎんふるび)」。淡路の土でしか出すことのできない、「新しくも逞しい」美しさは、あわじ瓦めしにぴったりです。
https://www.daieibrand.com/products/ginfurubi/
焼きあがった瓦のふたに、実際の鬼瓦にも使用される「シュロ縄」をつければ完成!

着想から丸三年、世界で唯一の「淡路瓦でつくった釜めしの蓋」が生まれた瞬間です。

### 6、南あわじ市の大人気レストラン「絶景レストランうずの丘」での期間・数量限定メニューについて
そして完成したことを道上さんはじめ様々な方にお伝え(自慢)していたところ、なんと南あわじ市の大人気レストラン「絶景レストランうずの丘」で採用いただけることになったのです。

2019年に着想を得てから丸三年、まったくのオリジナル商品を形にできたことは本当にうれしいことでした。あまつさえ、うずの丘さんで導入いただけるなんて当初は考えられず、とても感慨深いものがありました。
ところで、開発の前段階で道上さんが仰った「吸水性」について、兵庫県立工業技術センターで実際に調べていただきました。通常の木のふたと瓦のふたでそれぞれに炊飯し、炊飯後のふたの重さを比較してみるという方法です。結果がこちら。

これを見てわかる通り、あわじ瓦ふたの吸湿量は4.26g、通常の木のふたは2.06g、なんと2倍以上の吸水性があることが証明されました。そのおかげで本当にご飯がおいしく炊けますし、おこげがめちゃくちゃ綺麗にできます。
見た目だけではなく、機能性も抜群な「あわじ瓦めし」。四季折々の食材でつくった釜めしが食卓を彩れば、いつもの食事が少しだけスペシャルになること請け合い。

是非、瓦のふたも、そんな幸せなテーブルシーンに加えてみませんか。